組織内の目標設定を行う際には、KPIやOKRなど、様々なツールを利用することができます。中でもAndy Grove氏によって開発されたOKRシステムは、具体的な目標を設定し、結果を追跡するのに非常に効果的です。Intel社によって初めて用いられ、1999年にはGoogleも取り入れるようになったOKR。この記事ではOKRのメリットや作成方法などについて詳しく見ていきます。
OKRは、英語のObjectives(目標)と Key Results(成果)の略称。具体的で数値化可能な目標を設定し、それを組織内で共有したり、経過を観察したりするためのツールのことを指します。このフレームワークは、GoogleやIntel、LinkedInなど多くの大手IT起業によって用いられています。
OKRには、名前からも分かるように、大きく分けて2つの構成要素があります。1つ目は目標(Objective)で、特定の期間に会社として達成したい目標を簡潔かつ具体的に設定します。会社の規模にもよりますが、四半期ごとに1つの目標を設定することが一般的です。この目標を常に念頭において、組織の方向性とリソース配分を決定します。
2つ目は成果(Key Results)です。これは、目標の達成度合いを把握するための指標です。1つの目標につき、通常3~5つの成果を設定します。成果は明確で定量的なものであるため、目標を達成できているかどうかが一目で分かるようになります。
OKRシステムの共同開発者であるJohn Doerr氏によると、OKRの基礎は次の公式に凝縮されています。
我が社は【目標】を達成します。達成度合は【成果】によって測ります。
企業の目標設定に関わるマネジメント手法としては、KPIという言葉を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか?KPIはKey Performance Indicatorsの略称で、日本語では重要業績評価指標とも訳されます。
KPIは企業が定めた目標を達成する上で、その達成度合いを計測・監視するための定量的な指標のこと。多くの大企業が毎月の売上や新規顧客獲得数などをモニタリングするためにKPIを活用しています。KPIは一定期間の成果によって規定されており、これは1時間ごと、日ごと、月ごと、四半期ごと、または年ごとなど自由に設定することができます。KPIを活用する主な目的は、過去のパフォーマンスを分析し、データに基づいてこれからの方針やリソース配分などを定めることです。
一方でOKRは、目標を定義するための広範で戦略的な目標設定フレームワークです。望ましい結果を達成するための重点分野を定め、会社の方向性や優先すべき事項などを設定します。言い換えれば、KPIを重要視すべきかを定義するのがOKRなのです。
例えば、ある企業がOKRとして「より多くの製品を組み込むことでターゲットオーディエンスを増やす」という目標を設定したとします。この目標の成果は、新製品の数や市場投入日などで決定することができます。そして、このプロジェクトをサポートするためには、収益の増加や顧客エンゲージメントなどのKPIを参考にすることが可能です。
OKRフレームワークを活用したいと思っても、初めて設定するのはなかなか難しいかもしれません。そのため、OKRテンプレートを活用するのがおすすめです。
OKRテンプレートを利用するメリットには、次のようなものが挙げられます。
OKRの設定は、毎四半期ごとに繰り返し行うと効果的です。テンプレートを使うことで、全ての社員が同じフォーマットでOKRを作成できるようになり、新しいメンバーもすぐに手順になれることができるようになります。
OKRフレームワークの作成は、慣れていないと意外と時間がかかるもの。事前に作成されたOKRテンプレートを利用すれば、このプロセスを簡易化することができます。テンプレートの空白を埋めるだけで済むため、不要な情報を含めすぎたり、重要なコンポーネントを見逃したりするリスクを減らすのにも役立ちます。
OKRテンプレートは、誰でも見返した時に簡単に理解できるよう、明確で明確な方法で書かれています。そのため、混乱やミスを減らし、効率的に仕事をする目ることができるようになります。優良なOKRテンプレートを作るには、目標を明確に概説し、その目標の進捗具合を測るために3つの成果を明記することがおすすめです。
ビジネスの成功には、全てのチームメンバーが同じ目標に向かっていることが不可欠です。OKRテンプレートを使えば、標を簡単に全社員に作業の優先順位や焦点を明確に伝達することができます。
OKRを設定することは、組織全体の戦略を定めることでもあります。そのため、できる限り詳細で包括的に定義することが重要です。このプロセスを簡単にするOKRテンプレートのサンプルをまとめました(記事上部を参照)。 また、初めてOKRを導入する企業向けのアドバイスも解説。ただし、「必ずこうでなければいけない」というものではなく、ビジネス戦略と目標に基づいて柔軟に変更できることを覚えておきましょう!
OKRの基本概念は「目標の達成度合いを数値で測ることができる」ということ。そのため、OKRのスコアリングの方法を知っておくことが重要です。
Andy Grove氏の開発した元々のOKRは、単純な「はい・いいえ」の二択で進捗状況を把握するようになっていました。
(例)毎月の離脱率を5%減らすことができたか?→はい・いいえ
しかし、Doerr氏はより高度なスコアリング方法を開発しました。この方法では、0から1.0のスケールを使用して結果を測定します。
しかし、これらの方法ではより重要な点を見逃してしまう可能性もあるので注意しましょう。例えば、収益増加の結果が0.5だったとします。これは、目標がある程度達成されたことを示しています。しかし、この中に一般の顧客50人分に相当する利益を生み出した大口の顧客がいた場合、目標達成は必ずしも期待された方法で行われたわけではないことが分かります。
そのため、OKRは大きな骨組みとしてとらえ、その中で詳細を分析するスキルも求められます。
OKRフレームワークが正しく機能するためには、まずは効果的な目標を設定することが重要です。そのためには、SMARTを意識すると良いでしょう。
SMARTを意識して目標を設定することで、曖昧さの残らない現実的な目標を設定できるようになります。また、目標設定の際には「会社のミッションを達成するには何が必要か?」「どうやったら目標を達成できるか?」を常に問いかけましょう。
目標設定の際には、野心的になりすぎたり、逆に細かい点にこだわりすぎてしまったりすることが考えられます。ダラダラと書かれたOKRは読みにくく、混乱を招いてしまいます。また、メンバーが異なった目標に対してバラバラに仕事をし、四半期の終わりには燃え尽きてしまうことも考えられます。
簡潔さを保つのにおすすめの方法は、会社全体に対して1つの目標を定め、それに基づいて部門ごとに1つの目標を設定することです。そうすることで全メンバーが集中して仕事に取り組むことができるようになります。
OKRなどのビジネスツールは効果的ですが、結局のところ、成功はそのツールを利用する人のレベルにかかっています。成長と努力が評価される環境があれば、メンバーは自ずとOKRのコンセプトを理解し、毎日の仕事に適用することができるようになるはずです。目標を強く意識した仕事のスタイルは、新しいアイディアを生み出すのにも役立ちます。
社員がOKRに積極的に貢献することを奨励する企業は、様々な観点からの意見とナレッジを集めることができます。また、各メンバーが「自分も会社のミッションに貢献している、参加権がある」と感じることができれば、やる気アップにも繋がります。Kipwiseのような全社的なナレッジ管理プラットフォームを使用すると、チームがOKRで共同作業するのが簡単になります。